ジョゼと虎と魚たち/歴史的名作「コワレモノ」とは

ジョゼと虎と魚たち



ジョゼと虎と魚たち



日本のヒューマン映画・ラブストーリー2003年公開
監   督:犬童一心
脚   本:渡辺あや
原   作:田辺聖子の同名短編小説
主な出演者:妻夫木聡、池脇千鶴、上野樹里、新井浩文、板尾創路


るっかさんのレビュー

切なくてちょちょ切れ度



💘💘💘💘💘


これは15年ほど前の作品です。当時話題になり、見よう見ようと思いつつ、時は流れ、
今更の初鑑賞。もっと早く見ておくべきであった。いや、今見るからより良いのか。
つまりは良いものは非常に良い。普遍的に人間というものをリアルに描いた作品だと思う。
若い頃の妻夫木聡が大変良い。池脇千鶴の演技が素晴らしく、そしてかわいらしかった。
彼女以外にジョゼの役はできまい。わたくしは本作を見て、何度もちょちょ切れた。
ちょちょ切れポイントが沢山あり、わたくしの魂は強くゆさぶられたのである。
まさに歴史的名作と言えよう。
泣ければ良い映画であるとは決して思わないし、そのような判断基準は持ち合わせていないが、リアルさ。切なさ。爽やかさ。純粋さ。そのような要素がぎっちぎちに詰まっており、センチメンタルの宝石箱やーーー!!としか言いようがないのである。
音楽もくるりが担当しており、間違いない!!エンドロールの「ハイウェイ」がまたいい出汁きかせてるぜ。

ざっくりとしたあらすじと感想。
今回はざっくりいけるか心配やけどいってみよう!!


関西の大学に通う恒夫くん(妻夫木聡)は雀卓屋でアルバイトをしている。イケメンで社交的。セフレもおり、所謂リア充なのである。彼のバイト先の雀卓では最近あることが噂になっている。薄暗い早朝に老婆が乳母車を押している。それが何年も前からなのだという。
卓を囲んでやれ絶対赤ちゃんではないだの、人形ではないかなどと皆興味深々なのである。さすがは大阪地元民。噂好きで好奇心旺盛。よーしゃべる。ちょっかい大好き。

ある日恒夫くんはバイト後に雀卓のマスターの愛犬を散歩させていた。
すると。。。何ということでしょう!
坂の上から乳母車が勢いよく走り下りてくる。

ばあさんは「とめてー」と坂の上から叫ぶ。

恒夫君は受け止めます。

なんと乳母車の中には少女(池脇千鶴ちゃん)。
これが二人の出会いである。

ばあさんは少女が生まれつき足が悪く歩くことができないこと。足の悪いジョゼを世間から隠さなくてはならないという考えから、人目を避ける為、早朝に乳母車を押して散歩していたことを割とさらっと話す。

ばあさんはお礼に「朝飯食うていけ」という。
恒夫くんは強引にお邪魔させられる。
最初は戸惑う恒夫君であったが、飯のうまさに感激し、もりもりと平らげる。おかわりも
厚かましく何度もする。
少女は自分の名を「ジョゼ」と名乗った。本当はミツコであるとばあさんにすぐに暴露されたが。。。
彼女は外に出て散歩をしたいのであるが、祖母が「コワレモノ」であることを理由にそれを許さない。
だから毎朝早朝に乳母車に隠れて散歩していたのだという。
恒夫はわがままだなあ。なぜそんなに散歩に行きたいのかと問うと、ジョゼは
猫とか花とかを見るためや」と答える。

なんともかわいらしい。
おっとりとした大阪弁が味があって何ともいえません。

それから彼はちょくちょくジョゼの家に通い、彼女との交流を深めていく。
ジョゼはばあさんがごみ捨て場から拾ってきてくれる本を読んでいつも過ごしている。彼女はサガンの「一年ののち」という小説がお気にいり。ジョゼという名もそこからとったのである。

彼女がその小説の一説を朗読する場面があるのだが、その文章が情緒的で、ジョゼの心のうちを示唆しているようで、何かを予期させる。この映画の要と言っても過言ではないほどに印象深かった。

リア充の恒夫くんは、大学で知り合った女の子、かなえちゃん(上野樹里)ともいい仲になる。かなえちゃんは福祉関係の仕事につきたいと考えていると話していたこともあり、彼女にジョゼのことを話す。
彼女の助言により、ジョゼの住むアパートは無料でリフォームしてもらう運びとなった。工事会社のおっちゃん(板尾創路)に「若いのに関心や」と恒夫くんは誉められる。
しかし、そこへかなえちゃんが現れ、ジョゼは押し入れの中に引きこもる。
後日恒夫くんは後日ジョゼのもとを訪ねたが、拒絶されてしまう。
ばあさんには「あんたはここに来るべき人間やない。もう二度と来るな。」と念を押される。

切ない。もとはと言うとばあさんが強引に恒夫を家に招いたことが発端なのであるが、二人がこれほど惹かれあうとは思っていなかったのだろう。しゃーない。

それから恒夫くんはジョゼのもとに通うことを止めた。
しかし、就職活動中の恒夫くんは板尾さんと再会。そこでジョゼのばあさんが亡くなったことを聞き、急いでジョゼのもとへ。。。
ここから話は急展開!!
ジョゼは一人で暮らしてはいるのだが、部屋の様子は以前と少し違う。
しかも、近所の変態にぱいおつを揉ませることを条件に、ごみ捨てをしてもらっていると言うのである。
それはよくないと言う恒夫にジョゼは「帰れ」。
恒夫は帰ろうとするのだが、
玄関まで恒夫を追いかけ、
帰れ!帰れ言われて帰る奴は帰れ!!」と泣くジョゼ。
そこで私もジョーーーーーと泣く。
からのキス!!

この時の池脇千鶴の表情や仕草、声色なんかが素晴らしい。
きゃわたんである。

池脇千鶴のぱいおつが出た時は底はかとないエロスを感じずにはいられなかった。
神々しささえ感じでしまった。
まさかまさか、池脇千鶴のぱいおつが見れるとは!!
エロチシズムは奥が深いのだ!
彼女は歩くことはできないが、
ぱいおつは健全なのだ。
否、どこもかしこも健全なのだ。

ほどなくして二人は恒夫の実家の方に旅行に行く。海をモチーフにしたラブホテルで貝殻のベッドに横たわりながらジョゼは言う。「私はあんたとこの世で一番エッチなことをする為に深い海の底から生まれてきたんや」
的なことだったと思う。。。


とってもキャワタンであると同時に、胸を締め付けられる思いでもありますなー。

その後、二人はあっさりと別れる。
しかし二人にとってこれは生涯忘れることがない大切な思い出になるのであろう。

現実的に考えると、当然の結末。残酷ではあるけれど、大学生のまだまだ若い彼がこれから流れる長い時間をジョゼを背負いながら生きてゆくにはあまりに荷が重い。
全てを受け入れ、背負う覚悟をするには彼はあまりにも若すぎる。
誰にとってもそうなのである。
相手がいわゆる“健常者”であったとしてもそれは容易いことではないのだ。

そしてジョゼ自身がそのことを承知の上で恒夫と関係を持ったことは彼女の台詞の端々から感じることができる。



切ない展開ではあるが、この映画は全体的に爽やかで嫌な感じはしなかった。恋っていいなあ。逆にと思わせてくれる感じ。。。しみじみ

上野樹里とジョゼがビンタし合うシーンはリアルに男をとりあうただの女たち。という感じがして印象的だった。
幼馴染のヤンキーを演じる新井浩文さんのキャラもよかった!!素直になれないけど、車を貸してくれた彼、最高!!
ヤンキー役の彼は本当に味がありますね。いい演技してました!!


個人的に本作の前半にばあさんの口から出た「コワレモノ」という言葉がとてもひっかかった。
彼女は足は不自由ではあるけれども、逞しく純粋に生きている。
完璧なモノなどない世界。
私は全ての人間はコワレモノ。
バックホーンでいう所の、愛しきコワレモノなのではなかろうか。。。
そんな風に思えてならぬ。。。

読んでくれてありがとう💗💗💗

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